新入社員の「お客様感覚」をなくす方法|受け身・指示待ちにさせない声かけと3つのステップ
「最近どう?」「メール返信した?」。新入社員を気にかけて声をかけているのに、受け身で言われたことしかしない新入社員になってしまう。そんな悩みを持つ上司・先輩は少なくありません。
原因は本人の資質ではなく、入社時点で残っている「お客様感覚」と、上司の声かけの習慣にあるかもしれません。本記事では、セールスアカデミー代表・宮脇伸二が解説した動画の内容をもとに、新入社員の主体性を引き出す指導の順番を整理します。
【この記事で分かること】
- 新入社員が「お客様感覚」で入社してしまう理由と、入社直後に伝える言葉
- 声かけが多いほど受け身の新人が育つ理由と、声をかけてよい場面・控える場面
- ミスの再発防止や報連相を、本人が動く仕組みに変える方法
- 上司が今日から使える、褒め方・叱り方の「勇気づけ」の考え方
【本記事の根拠】
- 動画:セールスアカデミーチャンネル「新入社員が持つお客様感覚をなくし、主体的な社員に育てる方法を教えます!」(講師:宮脇伸二)
https://www.youtube.com/watch?v=IVG4LWTFw1U - 自社アンケート:2026年7月9日実施 新入社員フォローアップ研修「振り返りシート」(41社・新入社員203名の自由記述/自社調べ)
- 公的データ:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)」、厚生労働省・文部科学省「大学等卒業者の就職状況」(2026年4月1日現在)
※アンケートは自由記述を自社で分類した件数で、統計的な代表性を持つものではありません。
新入社員が「お客様感覚」になるのはなぜ?
結論:入社前の数年間、新入社員は会社を「選ぶ立場」にいたため、その感覚を持ったまま入社しやすいからです。
宮脇は動画で、背景を「ここ数年が売り手市場で、複数の会社から内定をもらい『どちらに入ろうかな』と選ぶ立場にあったから」と説明しています。選ぶ立場、つまりお客様の感覚のまま仕事を始めると、受け身の姿勢が続きます。
公的データでも、就職環境の良さがうかがえます。厚生労働省・文部科学省の調査では、2026年3月卒の大学生の就職率は98.0%(2026年4月1日現在)でした。一方で、令和5年3月に大学を卒業した新規学卒就職者の3年以内離職率は31.2%、高校卒は36.9%です。
| 項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 大学生の就職率(2026年3月卒・2026年4月1日現在) | 98.0% | 厚生労働省・文部科学省(2026年5月29日公表) |
| 新規大卒就職者の3年以内離職率(令和5年3月卒) | 31.2%(前年の33.9%から2.7ポイント低下) | 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」 |
| 新規高卒就職者の3年以内離職率(令和5年3月卒) | 36.9%(前年の37.9%から1.0ポイント低下) | 同上 |
選んで入った会社でも、期待と違えば離れる人が一定数います。「お客様」のまま入社した新人を、早い段階で「評価される側」に切り替えることが、定着と主体性の両方に関わります。
お客様感覚はいつ・何と言って抜けさせる?
結論:入社初日、遅くとも最初の1週間〜1カ月で、「あなたはもうお客様ではない」と言葉ではっきり伝えます。
宮脇は、入社日の朝9時の時点でお客様感覚をなくさせるつもりで伝えてほしいと話しています。動画では次のような言い方が紹介されました。
「3月31日までは皆さんはお客様でした。ただ、入社した以上はお客様ではありません。会社や上司を評価する立場にはもうありません。逆に、上司・先輩・経営者、そしてお客様から評価される立場に変わったのです。」
| タイミング | 伝える内容 |
|---|---|
| 入社初日 | お客様ではなく、評価される立場に変わったこと |
| 最初の1週間 | 社会人としての自己責任と、お客様・会社への責任 |
| 最初の1カ月 | 「待つのではなく自分から動く」という基本姿勢 |
この表の2・3行目は、動画の「初日あるいは最初の一週間、1カ月でしっかり伝える」という趣旨をもとに、編集部が整理した例です。
上司の指導法:お客様感覚を抜く
- 入社式・初日のオリエンテーションで、上司本人が「評価される立場になった」と一言で伝える
- セリフ例:「今日からは、お客様や会社から評価される立場です。そのぶん、期待もしています」
- 厳しさだけで終わらせず、「期待している」を必ずセットで伝える
※伝えるタイミングの目安は動画の趣旨をもとにした編集部の整理です。
新入社員への声かけは多いほどよい?
結論:必要以上の声かけは、声をかけてもらえないと動けない新入社員を増やします。
宮脇は、「最近どう?」「困ったことはない?」「〇〇社の営業はどうだった?」と上司から聞き続けることを、「一般的には良さそうに見えて、本当はしない方がいい指導」として挙げています。
たとえば、お客様へのメールの返信を忘れた新人に「返信した?」「返信しておいてね」と確認する場面です。宮脇は「声をかければかけるほど、声をかけてもらえないと動けない人材が量産される」と指摘しています。
VOICE(入社3ヶ月の新入社員・自由記述の傾向(編集部要約))
入社3ヶ月時点の振り返りシートでは、苦しかったこと・叱られたこととして「ミス・確認不足での指摘」が47件(203名中)で最多でした。続いて報連相のタイミングや伝え方が16件。確認する場面が多いほど、上司の声かけが「待ちの姿勢」につながりやすい場面でもあります。
※件数は自由記述を自社で分類した結果です(2026年7月9日実施・41社・203名)。
声かけの量を減らすと、最初は「放っておいていいのか」と不安になる上司もいます。しかし、新入社員が自分で気づいて動く機会を残すことが、自立への近道です。大切なのは、声をかける回数ではなく、声をかける理由を上司が説明できるかどうかです。
声かけをしてよい場面と控える場面は?
結論:メンタル面のケアは声をかけ、日常業務の確認は最小限にします。
| 場面 | 対応 | 理由 |
|---|---|---|
| メンタル面が不調そう/顔色が悪くなってきた | 声をかける | 動画でも、メンタルケアの声かけは必要とされています |
| 何か困っていそうな様子 | 声をかける | 困りごとを抱え込ませないため |
| 「最近どう?」「何かない?」の定期的な確認 | 最小限にする | 上司に聞かれるまで待つ習慣がつくため |
| メール返信漏れなど、業務の確認 | 声かけで済ませず、仕組みを考えさせる | 上司がいない時に再発するため |
| 報連相 | 部下から行うものと伝える | 上司から聞きに行くと受け身になるため |
一方で、宮脇は「新入社員は表面上や表情・態度とは違い、不安を抱えていることがある」とも話しています。声かけを減らすことは、見守らないことではありません。注意深く見ながら、声をかける場面を絞ることがポイントです。
VOICE(入社3ヶ月の新入社員・自由記述の傾向(編集部要約))
仕事上の不安については、203名中97名(約48%)が「特に不安はない」と回答しました。一方、独り立ちや一人で担当を持つことへの不安は9件ありました。多くは「10月から担当デビュー」という節目の時期に言及しています。
上司の指導法:声かけを減らす
- 「最近どう?」の代わりに、報告してほしいタイミングを先に決めておく
- セリフ例:「その日の終わりに、状況を3行で私に報告してね。待っているよ」
- 独り立ち・担当デビューなどの節目は、あらかじめ「困ったら相談して」と伝えておく
※「報告のタイミングを先に決める」はセールスアカデミーが推奨する運用例です。
ミスの再発防止は上司が言う?本人に考えさせる?
結論:まず本人に「二度と起こさないために何ができるか」を考えさせ、出なければ具体例を渡します。
メールの返信漏れが起きるのは、漏れを防ぐ仕組みがないからです。その仕組みが「上司の声かけ」になっていると、上司がいなければ漏れは防げません。
動画では、次の順番が紹介されています。
- 「二度と返信漏れをしないために、何ができる?」と本人に考えさせる
- 本人が答えを出せたら、それがベスト
- スキルや知識が不足して答えが出ないときは、「私はこうしているよ」と具体例を一つ渡す
上司の指導法:再発防止を仕組みにする
- 「返信した?」ではなく、「どうすれば漏れなくなると思う?」と問いかける
- セリフ例:「私は、受信後すぐにタスクに入れて、送信まで消さないようにしているよ。あなたならどうする?」
- 決めた仕組みは、本人の言葉でメモに書かせる
※セリフ例はセールスアカデミーが推奨する運用例です。
報連相は上司から聞くもの?
結論:報連相は部下から上司にするもの。上司から聞きに行くと、新人は受け身になります。
宮脇は、報連相をなかなかしないからと上司が「今日どうだった?」と聞きに行く対応を「非常に良くない」としています。上司が聞いてくるまで待つ習慣がつくためです。
報連相を部下の仕事にするには、「何を・いつ・誰に」を最初に明確にしておくことが役立ちます。厳しくする必要はなく、役割を言葉にして渡すだけで構いません。
たとえば、毎日の終わりに「今日の報告」を新入社員から上司に出す形にすると、上司が聞きに行く必要がなくなります。報告の中身が薄くても、最初は「自分から来たこと」を受け止め、内容は少しずつ求める水準を上げていきます。報告する習慣そのものが、受け身から能動へ変わる最初の一歩です。
主体的に動いてもらうには?褒め方・叱り方は「勇気づけ」で考える
結論:褒めるのも叱るのも、本人が一歩踏み出す勇気を持てるようにするための手段です。
宮脇は、注意だけでは不足し、「今の若い人は叱るだけではだめ」と話しています。同時に、自己責任を伝える「いい意味での恐怖感」も必要だとしています。
- 責任を伝える:「社会人なので自己責任です。返信漏れでお客様からクレームが来たら、責任は取れません」
- 期待を伝える:「あなたはこのレベルではないと思っている。もっと高い水準の仕事ができると信じている」
| 伝え方 | 受け取り方 |
|---|---|
| 「返信漏れをしているけれど、あなたはこのレベルではないと思っている。もっと高い水準の仕事ができると信じているよ。早くこの段階を卒業しよう」 | 期待されている。次はやってみよう |
| 「いつまで返信漏れをしているんだ。だらしないな」 | 否定された。怖いから言われたことだけやろう |
同じ内容でも、伝え方で受け取り方は変わります。宮脇は、相手がどう感じるかを見ることが重要だと述べています。
上司の指導法:勇気づけを日常にする
- 叱るときは、責任(自己責任)と期待(信じている)を同じ場面でセットで伝える
- 褒めるときは、結果だけでなく「自分から動いた行動」を具体的に伝える
- セリフ例:「自分から先に報告してくれて助かったよ。その動き方を続けてほしい」
※褒め方のセリフ例はセールスアカデミーが推奨する運用例です。
AIを使いこなせる新人の育て方については、言われたことしかしない新入社員の育て方|AI時代の新人育成で教える「3つの力」も参考にしてください。基礎となる心構えは、新入社員研修で教えるべき「当たり前」とは?で整理しています。
新入社員の受け入れ前に確認したいチェックリストは?
結論:「お客様感覚を抜く言葉」「声かけのルール」「報連相の役割分担」の3つを、受け入れ前に決めておきます。
| ✔ | チェックポイント |
|---|---|
| □ | 入社初日に「評価される立場になった」と伝える言葉を用意している |
| □ | 声をかける場面(不調・困りごと)と控える場面(日常の確認)を、上司・先輩で共有している |
| □ | メールの返信漏れなどは、「声かけ」ではなく本人が作る仕組みで防ぐ方針にしている |
| □ | 報連相は部下からするものと、最初に役割として伝えている |
| □ | 叱るときに「責任」と「期待」を両方伝えることを、指導者全員で確認している |
| □ | タイプ別の接し方を知るため、4つのタイプ別診断を確認している |
新入社員のタイプによって、効果的な接し方は変わります。詳しくは、新人教育に効果的な4つのタイプ別診断とは?をご覧ください。体系的に学べるセールスアカデミーの新入社員研修もご案内しています。
新入社員の「お客様感覚」に関するよくある質問
Q1. 新入社員の「お客様感覚」とは何ですか?
A. 会社・上司を評価し、教えてもらうことや何かをしてもらうことを当たり前だと考えている姿勢のことです。宮脇は、売り手市場で会社を選ぶ立場にあったことが背景にあると説明しています。
Q2. 新入社員への声かけは多いほうがよいですか?
A. 必要以上の声かけは避けるのがよいです。宮脇は、声かけが多いほど「声をかけてもらえないと動けない人材が量産される」と指摘しています。ただし、メンタルが不調そうなときや困っていそうなときは声をかけます。
Q3. 新入社員がメールの返信漏れを繰り返すときはどうしますか?
A. 上司が確認するのではなく、「二度と漏らさないために何ができるか」を本人に考えさせます。答えが出ないときは、上司自身のやり方を具体例として一つ渡します。
Q4. 報連相は上司から聞いてもよいですか?
A. 基本は部下から上司に行うものです。上司から聞きに行くと、新入社員は聞かれるまで待つ受け身の姿勢になります。
Q5. 新入社員を叱るときの注意点は何ですか?
A. 叱るだけでは不十分です。自己責任を伝えたうえで、「もっと高い水準の仕事ができると信じている」と期待も伝えます。叱る・褒めるのはどちらも、本人に勇気を持たせるためのものです。
まとめ:お客様感覚を抜き、声かけを絞って主体性を育てる
結論:新入社員を主体的にする近道は、早く「評価される立場」へ切り替え、声かけを絞り、本人が動く仕組みを任せることです。
- 入社初日〜1カ月で、「お客様ではなく評価される立場になった」と伝える
- 声かけは、不調や困りごとの場面に絞り、日常の確認は最小限にする
- ミスの再発防止は、まず本人に考えさせ、出なければ具体例を渡す
- 報連相は部下からするもの。叱る・褒めるは「勇気づけ」で行う
おすすめの2027年向け新入社員研修
本記事でご紹介した「お客様感覚を抜く言葉」「声かけの絞り込み」「勇気づけの指導」を実践するカリキュラムは、以下の研修でご提供しています。
【動画で解説】新入社員のお客様感覚をなくし、主体的な社員に育てる方法
本記事で引用した宮脇伸二の発言の全文は、以下の動画でご覧いただけます。
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執筆:株式会社セールスアカデミー 編集部
監修:宮脇伸二(株式会社セールスアカデミー 代表取締役/新人育成・営業人材育成の専門家)
出典:
・2026年7月 新入社員フォローアップ研修「入社3ヶ月の振り返り」アンケート/41社・新入社員203名・自社調べ
・厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html
・厚生労働省・文部科学省「令和8年3月大学等卒業者の就職状況」(令和8年5月29日公表)※日本商工会議所の報道ページ経由で確認 https://www.jcci.or.jp/news/news/2026/0529094359.html
・「新入社員が持つお客様感覚をなくして、主体的な社員に育てる方法を教えます!」(セールスアカデミー)YouTube動画(宮脇伸二 発言より) https://www.youtube.com/watch?v=IVG4LWTFw1U